「演奏研究授業成果発表会」実施

この報告は、東京藝術大学Webサイト内「GEIDAI×GLOBAL」にも掲載されています。

2月27日(火)に、本校201ホールにて演奏研究授業成果発表会を実施いたしました。

実施概要

発表者:本校第2学年
発表日:平成30年2月27日(13時~15時)
研究協議会(15時半~)※教職員対象
出席者:本校1年生徒
SGH指定校、及び全国音楽学校協議会加盟校の先生方11名

授業の概要

演奏研究の授業は、2、3年次の2年間履修します。
<洋楽専攻生>
音楽理論は1年次から継続的に主に和声を身体的に身につけ、さらには音楽を分析するのに必要な基礎力を養います。演奏研究ではこれらの学習を活かして実際に楽曲を分析し、いかに演奏表現へ結びつけるかについて演奏実践も交えて学習しています。
授業は2回から3回を1セットとし、1回目において和声や楽式の観点から分析した作品を、2回目に演奏を担当する生徒が実際に演奏し、分析した内容と演奏の関係や、効果的な表現についてクラス内での話合いと検証を重ねながら演奏を仕上げるという方法で行っています。演奏表現について楽譜から読み解く力に加え、音楽を分析的に聴く力を養うことを目標としています。
<邦楽専攻生>
現在、邦楽の世界においても五線の楽譜で合奏が行われるようになってくることが多くなり、(邦楽の世界では合奏譜はなく、箏曲譜、尺八譜、三味線譜等、楽器独特の専用譜によって演奏されています。)洋楽とのコラボレーションとして五線の楽譜で演奏することが当たり前の時代となってきています。まずは五線譜の楽譜で演奏できるようになることが第一の目標となります。今回発表の三木稔作曲「夕影の詩」は現代作品なので、授業では古典の曲にない手(演奏法)をどうして演奏するのかという研究をはじめ、楽譜にない笛や小鼓の手を入れるための研究も常に行いながら授業を進めました。基本的には各パートに分かれての練習の後に合奏をし、意見を述べ合ってより生き生きした演奏ができるように研究していきました。

発表の様子

実際に授業で扱った8作品について、演奏を担当したグループが分析内容の発表と実際の演奏の双方を行う形態によって発表を行いました。
発表にあたっては、譜例も用いながら分析内容を記した資料集の作成も生徒自身によって行われ、出席者にあらかじめ配布しました。分析により楽譜から読み取ることのできる内容、さらにはそれらを演奏にどのように結びつけるかについて各グループがおよそ5分間スピーチをした後に演奏をしました。中には数通りの演奏方法の可能性や効果について実際の演奏で示しながらスピーチをするグループもあり、それぞれに工夫が見られる内容となりました。最後には出席者からの質疑に答えました。演奏会とは異なり、作品に関するスピーチを交えながら発表を行うという場はこれまでに経験がなかったため、生徒たちは大変な緊張状態の中で発表を行うことになりました。資料作成の過程においても大変な試行錯誤がありましたが、「音楽を楽譜から読み解く力」を養い、将来音楽活動をする中で必要となる「伝える力」「言葉にする力」といった力を実践的に身につけるといった経験が今後の演奏活動における幅広い視野の獲得の助けになることが期待されます。
 

 

 

 

参考資料:当日配布のプログラム

プログラム

・平成29年度 英国演奏研修旅行 成果発表
鴨川 孟平、戸澤 采紀、三好 花奈、石橋 えりか

・演奏研究の授業について
洋楽専攻授業担当:平川 加恵 邦楽専攻授業担当:髙橋 裕

・平成29年度 演奏研究授業成果発表会

1.三木 稔作曲 夕影の詩
鹿島 千苑(箏)、高桑 杏奈(箏)、石橋 えりか(尺八)、芝原 流石(長唄三味線)、味見 麻衣(笛)、長谷川 莉奈(鼓)

2.ベートーヴェン作曲 ピアノソナタ 変イ長調 作品26 第1楽章より
石川 奈々歩(Pf)、岩井 亜咲(Pf)

3.モーツァルト作曲 弦楽四重奏曲 ト長調 作品387(ハイドンセット)第1楽章より
グループA 橘和 美優(Vn)、伊藤 怜子(Vn)、江藤 史織(Va)、泉 優志(Vc)
グループB 佐々木 つくし(Vn)、清水 伶香(Vn)、衛藤 理子(Va)、岩﨑 弓夏(Vc)

4.ベートーヴェン作曲 弦楽四重奏曲 第5番 イ長調 作品18-5 第1楽章より
戸澤 采紀(Vn)、辻 愛結実(Vn)、日髙 夕子(Va)、泉 優志(Vc)

~質疑応答~
休憩(10分)

5.ベートーヴェン作曲 ピアノ三重奏曲 変ホ長調 作品70-2 第1楽章より
黒澤 優芽(Pf)、山口 絢(Vn)、岩﨑 弓夏(Vc)

6.J.S.バッハ作曲 平均律クラヴィーア曲集 第16番 ト短調 より フーガ
鴨川 孟平(Pf) /  鎌倉 有里(Fl.)、東條 太河(Vn)、二階堂 充教(Trb)、泉 優志(Vc)

7.ベートーヴェン作曲 弦楽四重奏曲 第4番 ハ短調 作品18-4第1楽章より
福山 芙蓉(Vn)、三好 花奈(Vn)、江藤 史織(Va)、岩﨑 弓夏(Vc)

8.モーツァルト作曲 フルート四重奏曲 ニ長調 作品285 第1楽章より
太田 怜花(Fl)、武元 佳穂(Vn)、岡田 桃佳(Va)、泉 優志(Vc)

~質疑応答~
<15時30分~16時30分 研究協議会(2階 アンサンブル室Ⅰ)>

研究協議会の様子

協議会では、出席された先生方を交え、専門科としての音楽教育について活発な意見交換がなされました。
演奏研究の授業方法に関する質問では、授業内で取り組んでいる曲やグループごとの着目点の違い、また邦楽専攻生徒に対する導入指導について質疑応答がなされました。
他校からは本校ならではの編成の豊かさや、実演を伴う授業形式を行うことができている点を評価いただきました。
また出席された先生の中から、冒頭での本校生徒における英語のスピーチ(平成29年度SGH全国フォーラム発表スピーチ)から、楽しむことを目的とした英語授業を行っていると感じた、という感想もいただきました。
本校教員からは、理論の学習が演奏に影響を与えるためには、複合的な要素がかかわっており、演奏研究という授業がその手助けになっているのではないか、という意見や、高度に訓練されている生徒に対して、プリミティブなものをどのように与えていくかが音楽教育の今後の課題ではないかという意見が出されました。