求められる語学力とは?

世界最高水準の人材育成プログラム構築を目的として、将来、グローバルリーダーとして活躍する音楽家において重要となるコア・コンピテンシーである「多様性」を基軸とした「交信力」及び「共感力」を一層高めていくためには、語学力強化、特に英会話を基本としたインタラクティブなコミュニケーション能力向上が課題であるが、現状として、生徒毎の英語力水準に格差があるため、新たに習熟度別の少人数クラス編成を行い、英会話を中心に語学教育を充実させるとともに、さらに将来の国際的音楽家として必要となるドイツ語やフランス語等第二外国語についても、大学開設科目を選択履修できるようにすることが必要である。

加えて、実際に海外を含めた学外ステージにおいて他者と共演する実践経験を得るために、新たに学外舞台への生徒派遣を教育プログラムに導入し、多様な属性を持つ他者とのコラボレーションにより、共同で演奏活動を行う機会を付与することが必要である。

同仮説を支持する根拠は、音楽家としての国際的な活動、とりわけステージ共演等においては、一般的な英語の読み・書きというよりは、むしろスピーキングとリスニングを基本としたインタラクティブな英会話が必要不可欠であること、とりわけ藝高生は、文法等英語基礎力は標準的であるものの、音楽家の特性として「聴力」や「音感」には圧倒的に長けていることから、英会話には抵抗なく取り組むことができ、コミュニケーション能力の修得も比較的容易であると考えられることである。加えて、東京藝大とのつながりが深いパリ国立高等音楽院やベルリン芸術大学、ベルリンフィル等、将来的にフランスやドイツに活躍の場を求める可能性が比較的高いため、フランス語やドイツ語等第二外国語の学習に係る潜在的なニーズが高いことである。

また、将来、国際的な音楽家として多様な場面で活躍していく上で、オーケストラやアンサンブル等、多様な属性を持つ他者との共演・合奏は必要不可欠であることから、在学中から学外ステージにおいてコラボレーションの機会を得ることは極めて重要である。同仮説の実施により、コミュニケーション能力やコラボレーション能力が強化されることを通じて、他者との交流に基づく音楽活動実践のための交信力や、対話・共演等に必要な共感力の涵養が期待され、その結果として、将来、国内外のコンクールやステージ等への参加・演奏機会が増加することはもとより、国内外の一流音楽家とのセッションや国内各地域において聴衆のニーズ等を的確に踏まえた演奏交流が可能となるなど、将来、国際舞台を含め幅広く活動するための音楽家としての柔軟性ある対話・交流能力や卓越したセンスを輝かせることができる。