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語学力の到達達成度を5段階で考えています

グローバル・リーダーとして将来的に活躍する音楽家には、コア・コンピタンシーである「多様性」を基軸とした「交信力」及び「共感力」が求められる。そして、これを実現するためには語学力の強化が必須となる。そのために必要な5つの段階を以下のように設定し、能力別の各クラスの到達目標の参考とする。具体的には、グレード別クラス(赤白青の3組で、赤が上位で青が下位)の赤組は2年時の前期終了時までに第5段階を目指し、白組は2年時の後期終了までに第3段階(または第2段階)を目指す。青組に関しては、生徒の実態に応じて柔軟に対応しながら第2段階に到達できるよう基礎力を重視する。

 

第1段階

オーラルワーク中心の授業を大学の言語・音声トレーニングセンターを中心に実施し、英語を「聞くこと」「話すこと」に慣れ、積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲・姿勢を育成する。また、音楽に関する情報を発信・受容できるように英語の発表語彙を拡充する。音楽史や音楽理論の授業等の教員と協力し、必要語彙の選定を試みる。

第2段階

音楽に関する語彙力を拡充しながら、それを用いた表現や例文を導入し、「コンサートのチケットを予約する」などの疑似コミュニケーション活動を通して情報を発信・受容できる能力を育成する。また、まとまりのある短い英文が書けるように「書くこと」の指導も取り入れる。聞くことや話すことの指導は継続しながら、徐々に聞き手・読み手を意識した「話すこと」「書くこと」の作業に重点を移行する。さらに、生徒個人の音楽に関する趣味や夢などについて、英語を用いた発表活動も積極的に取り入れる。

第3段階

音楽科と協力しながら、演奏研究や鑑賞研究の授業内容から、生徒自身の知識・意見・感想等を英語で表現できるように指導し、交信力や共感力を育成する。また、生徒自身が課題を設定し、調査研究し、その結果を発表できるように音楽科・英語科の教員でサポートする。外国からの著名な講師による公開レッスンなどで生徒が積極的にコミュニケーションを取りながら、受動的ではなく能動的なレッスンが受講できる環境を準備する。さらに、自分の好きな曲の構成や特徴、またその理由などを図や表を用いて整理しながらプレゼンテーションする作業なども取り込む。

第4段階

第3段階までのコミュニケーション能力を十分に達成した生徒については、本人の希望により、ドイツ語・フランス語・イタリア語等の授業を大学の言語・音声トレーニングセンターで受講できることとする。その内容は、上記で述べた英語に関するコミュニケーション能力の育成過程に準ずるものとする。ただし、附属高校のカリキュラム外の選択授業としての扱いとする。

第5段階

海外からの留学生とのコンサートの企画・運営、また、海外での演奏修学旅行におけるコラボレーション・コンサートにおける企画・運営の相談や連絡、さらには、交流会などにおけるリーダーまたはコーディネーターとしての活躍の場を積極的に提供する。事前指導や事後指導では、個人や団体の責任者として、メール等による情報交換を進んで行うよう指導し、「言葉の壁」や「環境の壁」をクリア―したグローバル・リーダーとして一人立ちできるよう支援する。

 

以上の5段階は、5年間で達成するものではなく、生徒の実態と変容に応じて進めていくものである。従って、例えば、第5段階においても、なお第3段階における能動的なコミュニケーション能力の育成に焦点を置くこともあり得るし、第4段階を視野に入れない場合もある。

求められる語学力とは?

世界最高水準の人材育成プログラム構築を目的として、将来、グローバルリーダーとして活躍する音楽家において重要となるコア・コンピテンシーである「多様性」を基軸とした「交信力」及び「共感力」を一層高めていくためには、語学力強化、特に英会話を基本としたインタラクティブなコミュニケーション能力向上が課題であるが、現状として、生徒毎の英語力水準に格差があるため、新たに習熟度別の少人数クラス編成を行い、英会話を中心に語学教育を充実させるとともに、さらに将来の国際的音楽家として必要となるドイツ語やフランス語等第二外国語についても、大学開設科目を選択履修できるようにすることが必要である。

加えて、実際に海外を含めた学外ステージにおいて他者と共演する実践経験を得るために、新たに学外舞台への生徒派遣を教育プログラムに導入し、多様な属性を持つ他者とのコラボレーションにより、共同で演奏活動を行う機会を付与することが必要である。

同仮説を支持する根拠は、音楽家としての国際的な活動、とりわけステージ共演等においては、一般的な英語の読み・書きというよりは、むしろスピーキングとリスニングを基本としたインタラクティブな英会話が必要不可欠であること、とりわけ藝高生は、文法等英語基礎力は標準的であるものの、音楽家の特性として「聴力」や「音感」には圧倒的に長けていることから、英会話には抵抗なく取り組むことができ、コミュニケーション能力の修得も比較的容易であると考えられることである。加えて、東京藝大とのつながりが深いパリ国立高等音楽院やベルリン芸術大学、ベルリンフィル等、将来的にフランスやドイツに活躍の場を求める可能性が比較的高いため、フランス語やドイツ語等第二外国語の学習に係る潜在的なニーズが高いことである。

また、将来、国際的な音楽家として多様な場面で活躍していく上で、オーケストラやアンサンブル等、多様な属性を持つ他者との共演・合奏は必要不可欠であることから、在学中から学外ステージにおいてコラボレーションの機会を得ることは極めて重要である。同仮説の実施により、コミュニケーション能力やコラボレーション能力が強化されることを通じて、他者との交流に基づく音楽活動実践のための交信力や、対話・共演等に必要な共感力の涵養が期待され、その結果として、将来、国内外のコンクールやステージ等への参加・演奏機会が増加することはもとより、国内外の一流音楽家とのセッションや国内各地域において聴衆のニーズ等を的確に踏まえた演奏交流が可能となるなど、将来、国際舞台を含め幅広く活動するための音楽家としての柔軟性ある対話・交流能力や卓越したセンスを輝かせることができる。